患者さんと
ご家族へのインタビュー
〜血友病と生きる
私たちのいろんな気持ち〜

『消去法の思考』で自分の得意分野を極めていきたい。-塩田博之さん(社会人)と婚約者の新倉恵さん(3/5)

深い闇の中から抜け出し、再びプログラマーとして活動開始。
共に人生を歩む、大切な女性(ひと)とも巡り会えた。(塩田さん)

私が心を病んだのは、高校卒業後、プログラマーとして活躍していた7年目の時です。長期の入院加療を経て、自宅で療養している中、「何もしないで、このまま30代を迎えるのは嫌だ」という気持ちを抱え、『消去法の思考』で自分にできること、頑張れることを探していました。そこで出会ったのがNEET株式会社(http://neet.co.jp/(外部サイトに移動します))です。

NEET株式会社はメンバー全員が取締役となり、それぞれのメンバーが提案・企画したあらゆる事業を展開していくという会社です。取締役がどこかの会場に集まってリアル会議をすることもありますが、基本的に会社内の出来事はニコニコ生放送/動画やUstreamなどで配信されてきますし、取締役同士のやりとりはSkypeなどで通信すればいいので、自宅にいても何らかの事業に携わることができます。

アナログゲームの制作に興味があった私は、NEET株式会社の取締役としてアナログゲーム事業部に所属し、アナログゲームの開発・販売に取り組むことにしました。まずは著作権フリーの画像を使って、タロットをモチーフにした『アーガーデュエル』というアナログゲームを制作しました。続いて、『ダイヤを掘ろう』というアナログゲームの制作に取りかかりました。その際、カードに使うイラストを描いてもらえる人が必要となり、イラストレーターを探していたところ、たまたま参加した株主総会を兼ねた取締役リアル会議にて、会社内の公式放送でアシスタントを務めていた猫舌ひよこさん(婚約者の新倉恵さん)と出会いました。

当初はあくまでも仕事仲間でしかなかった猫舌ひよこさんですが、『ダイヤを掘ろう』を作り上げていく中で、自然と人生を共に歩む大切な女性となっていきました。彼女との将来を考え、成果に応じた役員報酬では生活が不安定なため、NEET株式会社を辞任し、在宅勤務の契約社員として雇用してくれる会社にプログラマーとして再就職しました。

医師にあらためて血友病とはどのような病気かを聞き、
自分よりも孫の代は絶対に楽になると信じて、彼女と結婚することを決意。(塩田さん)

もちろん、血友病は遺伝性の病気であることから、彼女との将来に不安がなかったわけではありません。主治医には、あらためて血友病がどのような病気なのかを説明してもらいました。特に、どのように遺伝するかについては詳しく教えてもらいました。そこで分かったことは、自分の子どもの代では血友病は発症しないが、孫の代では発症する可能性があるということです。

血友病はかつて、子どもの頃のちょっとしたケガで簡単に命を落とすような病気でした。やがて補充療法が確立され、命を落とす病気ではなくなりました。しかし、感染症の問題が起こりました。それも今は解決済みで、製剤はよりコンパクトに使いやすくなっています。私もそうした医学の進歩による恩恵をたくさん受けましたが、孫の代になれば私よりももっとたくさんの医学の進歩による恩恵を受けられると思います。

そうであれば、仮に孫が血友病であっても私よりも楽になることが確実であるから、今この段階で「結婚を諦める」、「子どもを諦める」ことはないと思い、彼女と暮らし始めました。二人で一緒にいるようになり、以前よりも活動範囲が広がるなど可能性が広がってきています。