血友病インヒビターの治療法

インヒビターに対抗する2つのアプローチ

血友病インヒビターは、インヒビターがなくなると、普通の血友病と同じように治療することができるようになります。
そのため、インヒビターができたときは、「出血を止める」治療だけでなく、「インヒビターをなくす」治療をあわせた2つのアプローチで治療をすすめます。

血友病インヒビターに対抗する2つのアプローチ - バイパス療法と補充療法の続行
血友病インヒビターに対抗する2つのアプローチ - バイパス療法と補充療法の続行

第VIII(IX)因子を使わずに出血を止める「バイパス療法」

「バイパス」とは混雑などで通りにくくなった道をさけて通る別の道のこと。第VIII(IX)因子を注射すると、それにあわせてインヒビターの量が増えてしまうハイレスポンダータイプの患者さんの場合、注射する第VIII(IX)因子の量を増やしても、そのほとんどがインヒビターにやっつけられて効きめをなくしてしまいます。そのため、第VIII(IX)因子ではなく、違う血液凝固因子を使うルートで出血を止めようというのが「バイパス療法」です。バイパス療法には、乾燥人血液凝固因子抗体迂回活性複合体(aPCC)などのバイパス製剤が使われます。

バイパス療法のメカニズム

血友病インヒビターに対抗する2つのアプローチ - バイパス療法のメカニズム

多めの第VIII(IX)因子で出血を止める「補充療法の続行」

第VIII(IX)因子を注射してもそれほどインヒビターの量が増えないローレスポンダータイプの患者さんの場合、第VIII(IX)因子を多めに注射することでインヒビターを中和して、残った第VIII(IX)因子で出血を止めます。とくに大量に注射する場合を「中和療法」と呼ぶこともあります。

投与する量を増やして治療する理由

血友病インヒビター - 投与する量を増やして治療する理由

インヒビターを作らせなくする「免疫寛容療法」

定期的に注射することで第VIII(IX)因子に体を慣らして、免疫による攻撃を止めさせる治療法です。この治療法で半数以上の患者さんがインヒビターの無い状態に戻ることができるといわれています。

免疫寛容療法のメカニズム

血友病インヒビター - 免疫寛容療法のメカニズム
参考:
  • 血友病インヒビターといわれたら(嶋 緑倫)