患者さんと
ご家族へのインタビュー
〜血友病と生きる
私たちのいろんな気持ち〜
『消去法の思考』で自分の得意分野を極めていきたい。-塩田博之さん(社会人)と婚約者の新倉恵さん(2/5)
あらゆる可能性から、自分にはできないことを差し引いていっても、
必ずいくつか自分にもできることが残る――それを頑張ればいい。(塩田さん)
一方、私は勉強を頑張り、それで私をサポートしてくれている友だちに恩返しをしました。正直なところ補充療法は面倒くさいし、運動ができないことはショックでした。体育(運動)は嫌いではなく、どちらかといえば好きな方でした。しかし、現実として足首をすぐに痛めてしまったりして、授業を休むことが多く、『優』の成績をとることはできませんでした。それならば「勉強を頑張ればいい」と思いなおし、そちらを頑張ったのです。
部活動も野球部やサッカー部などの運動部に入りたかったのですが、小学校では親の許可が得られず合唱部に、中学校では運動部は難しいと自覚して美術部に入りました。そこで自分なりに頑張りました。
私は、五体満足に産んでもらったことを感謝せずに、血液凝固因子が欠乏・低下していて血が止まりにくいという体質のためだけに親に文句ばかり言う『非生産的なことが嫌い』なタイプでした。そうしたこともあってか、運動ができないならできないことに文句ばかり言うのではなく、自分のできる勉強、合唱、美術で頑張ろうと思えたのかもしれません。
こうした思考を、私は『消去法の思考』と呼んでいます。これは、あらゆる可能性を列挙し、自分にはできないことを差し引いていき、残った自分ができることを頑張るというものです。今ではこの『消去法の思考』が私の基本的な哲学となっています。この思考が血友病からだけでなく、仕事上のトラブルや家族の不幸などが相次いで重なり心を病んだ時にも私を救ってくれたからです。