患者さんと
ご家族へのインタビュー
〜血友病と生きる
私たちのいろんな気持ち〜

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INTERVIEW

仕事もプライベートも、思いきり楽しんで生きる

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愛知県内にあるサーキット場にて。愛車とともに、笑顔の村松さん。サーキット場へは年に2、3回来ているそうです。
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村松 陽(あきら)さん
静岡県在住
看護師

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1991年生まれ。小児病院の循環器系病棟で看護師として働いている。
趣味はスキー、スノーボード、カーレース、ジェットスキーと多彩。
いつもおだやかにゆっくり話す村松陽さん。優しい存在感に、職業が看護師と聞いて納得してしまいます。でもその一方で、スポーツ好きというアクティブな一面も持っています。職業を選ばれた背景や、大好きな趣味のお話、そして他の患者さんへのメッセージなどをうかがいました。
「何でもやれ」というタイプの父から
スキーや車の世界を教えてもらった。
父が機械に関する仕事をしていて車やバイクが好きで、その影響から僕も子どものころより車やバイクが好きになりました。父と車の雑誌をよく一緒に見ていましたね。高校を卒業するころに免許を取得して、22歳からサーキットで走るようになりました。

心配性の母とは真逆で、父は「何でもやれ」というタイプです(笑)。スキーも趣味だった父は「転んでも雪だから捻挫や打撲はしにくい。大丈夫だ」と考えたようで、僕は3歳のときからスキーをしています。小学生のころは冬休みのみでしたが、中学生になると、冬の間、毎週末に父と二人で静岡から新潟のスキー場へはるばる行き、レッスンを受けていました。スキー場主催のスキー大会に出場して、2位になったこともあります。今でも冬に必ず一度は家族全員でスキーをしに行っています。また、夏にはジェットスキーです。季節ごとの楽しみがあって、どれも楽しいですよ。
「どうして自分だけが」と悩んだ小学生時代。
定期補充療法の大切さを知った。
今でこそアクティブに趣味を楽しんでいますが、子どものときには血友病のことで悩んだこともありました。小学生のころ、学校で足首に出血して、家までの道のりを赤ちゃんのようにハイハイをして帰ったことがありました。何回かそんなことがあり、「どうして自分だけが病気なんだろう。みんなは走れるのに、どうして僕はできないんだろう」と悩んだことがありましたね。出血を避けるため、マラソンや、ジャンプをするような跳び箱などの体育の授業は、欠席していました。

両親から「注射をきちんと打てば、他の人と変わらずに生活ができる」と言われ、自分のなかでその意味を理解し、「体がこうなったときにはすぐ注射をしよう」という感覚を養っていきました。だから、きちんと治療をすれば、やりたいことやスポーツにチャレンジすることができました。現在は週に2回ほど定期補充療法を行い、何かあったときに追加補充をしています。病院へは2〜3カ月に一度行ってますね。
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車の整備はもちろんのこと、車体を軽くすると速く走ることができるため、車の改造も自らしているそうです。
患者さんの心身の元気を
看護師としてサポートしたい。
小学生のころは、毎年入院をしていました。そのとき、バイクが好きな男性看護師さんがいて、よく話をするようになり「世の中にはこういう仕事があるんだ」と興味を持ちました。
その方が、「看護師として働いていると、いろいろな患者さんと出会えるし、その方たちが元気になって退院していく姿を見ることができるのはうれしいよ」とおっしゃっていました。僕の立場からすれば入退院はよくある出来事に過ぎないのですが、看護師さんが退院を「うれしい」と思って見てくれているんだ、と印象に残りました。
体のケアはもちろんですが、病気のときはどうしてもネガティブに考えてしまうことが多いので、「患者さんが元気になれるように話をしたり、笑ってもらえたりしたらうれしいな」と感じ、高校3年のときに看護師になることを決めました。
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車関係の仲間とともにジェットスキーへ行くようになったそうで、趣味の活動の幅がどんどん広がっているといいます。
患者さんのみならず、親御さんのケアも必要。
僕だからこそできる仕事をしていきたい。
今、看護師になって3年目です。子ども病院の循環器病棟で、心疾患の入院患者さんと接しています。実は、自分が子どものころに入院していた病院で、お世話になっていた先生が院内で働いています。生まれつき病気の患者さん本人の気持ちを察したり、親御さんの立場になって考えたりしています。もちろんメインは患者さんのケアですが、それと同じくらい大切なのは、親御さんの精神的なケアだと思っています。

治療が進歩したことによって、僕より若い世代の血友病患者さんは、定期補充療法を行うことで出血のリスクが軽減しました。出血を一切怖がらなかったり、極度に怖がったりするのではなく、「出血しても製剤があれば大丈夫だ」ということを実感してほしいです。
病気だからといって引きこもらずに、何ごとにもチャレンジしましょう。挑戦したうえで難しければやめればいいし、まずは自分でどこまでできるかを確かめればいいと思います。僕は多趣味で両親に呆れられていますけど(笑)、好きなことをやるのは楽しいですよ。

取材後記

自分が持っている力を存分に発揮して、仕事もプライベートも楽しんでいる村松さん。人生を楽しむ心がけや、命を尊ぶ姿勢を感じます。有難うございました。
写真:橋本裕貴 文:小久保よしの
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