患者さんと
ご家族へのインタビュー
〜血友病と生きる
私たちのいろんな気持ち〜
定期補充療法で将来の関節障害を予防することが大切。ー佐久間 航也 さん(大学生)(3/3)
失敗を経験してできるようになった自己管理
これからも関節を守っていきたい
現在、私には、足首の可動域が若干狭くなっている以外、関節障害がありません。それは、病院の先生や親が、私の小さい頃から定期補充療法と予備的補充療法を含め体調管理をきちんとしてくれていたからで、とても感謝しています。
小学校6年生の修学旅行の時には自己注射ができるようになっていましたが、本当に自分一人で体調管理をするようになったのは、浪人時代に予備校の寮に入ることをきっかけに親元を離れてからです。
大学1回生の時に、マサチューセッツ工科大学が主催するiGEMに参加することになりました。主に学部学生が参加する合成生物学の国際大会です。夏休みぐらいから実験漬けの毎日で、体調管理がいい加減になっている中、渡米前日に、自転車のペダルにふくらはぎをぶつけました。
「とりあえず自宅に帰ってから自己注射すればいいや」と、朝方4時までプレゼンの練習をして自宅に戻ったのですが、「空港に行くまでに」……「飛行機に乗る前までに」と、自己注射のタイミングをどんどん逃していき、結局、自己注射をしないで飛行機に乗ってしまったのです。その結果、米国に着いた時には足がパンパンに腫れ上がり、歩くこともままならない状態でした。iGEMでの発表こそできたものの、観光は何一つできませんでした。
定期補充療法は2日に1度のペースの自己注射で、製剤の溶解から注射、副作用のチェック、投与の記録、片付けまで10分もあればできます。この“iGEM事件”で、その10分という時間が自分の考え方次第では確保できず、その結果どれだけ辛い目にあうのかを痛感しました。
以来、定期補充療法はペースを守り、何よりも優先するように心掛け、例えば朝寝坊した際に一コマの授業をとるか、自己注射をとるかとなったら必ず自己注射をとるくらいになりました。それでも、時々、大なり小なりのトラブルを経験し、ようやく、自分一人できちんと体調管理ができるようになったのは、親元を離れて4年経った頃です。これからも、関節障害が起こらないように、しっかりと体調管理をしていきたいと考えています。
現在、参加している大阪の家族会では私が最年長の患者で、主治医からの依頼もあり、血友病の小さな子どもを持つ親に対してお話をする機会が時々あります。そこでは、「激しく活動しがちな子どもの頃は、定期補充療法と予備的補充療法により関節内出血を予防し、成人するまでの関節障害をできるだけ抑えることが大切であること」を伝え、それをベースに、自分に向いたことを見つけ、無理をせずに楽しく過ごしている“今の私”を見てもらっています。