血友病の治療

関節内出血の症状と出血時の補充療法について

関節のしくみ

関節のしくみ

関節内の出血は血友病の出血症状の中で最も多く、これを繰り返すと慢性的な関節障害をきたします。

関節は図で示すように、骨と骨との間を靱帯【じんたい】や筋肉がつなぎ、その内側を関節滑膜【かつまく】と呼ばれるなめらかな膜が覆っています。

この関節滑膜の内側は関節腔【かんせつくう】と呼ばれ、袋状になっています。

関節内出血はこの関節腔への出血がほとんどです。

関節内出血

関節内出血

関節内出血の症状

違和感、痛み、腫れ、熱感
血友病の出血症状の中で最も多い。幼児期は足首、膝、股関節の出血が中心。学童期は肘関節の出血も増加する。

初回投与量の目安

・前兆、初期の場合:
体重×10〜20単位(血友病A)
体重×20〜40単位(血友病B)
・重症の場合:
体重×20〜40単位(血友病A)
体重×40〜80単位(血友病B)

連続投与量の目安

体重×10〜40単位(血友病A)
体重×20〜80単位(血友病B)
出血症状消失まで

関節内出血の症状は、関節の違和感、痛み、腫れ、熱感などです。
幼児期は、どちらかといえば足首、膝、股関節などの出血が多く、小学生以上は肘や肩の出血も増加してきます。関節の中は滑膜で密封されているため、少量の出血でも関節腔内の圧力は非常に上昇します。したがって関節内出血は少量でも非常に痛いことが多いですが、出血の量としてはそれほど多くなることはありません。

初回投与量の目安は、症状が前兆のみ、出血初期の場合、血友病Aの方は体重×10〜20単位、血友病Bの方は体重×20〜40単位です。

重症の出血の場合は、血友病Aの方は体重×20〜40単位、血友病Bの方は体重×40〜80単位です。

連続投与量の目安は、症状に応じて、血友病Aの方は体重×10〜40単位、血友病Bの方は体重×20〜80単位で、出血症状消失まで継続します。

動画で解説 血友病の関節障害

関節障害の進行

関節障害の進行

1回1回の出血で関節滑膜には少しずつ傷が増えていきます。これを繰り返していると、本来なめらかであるはずの関節滑膜の滑りがだんだん悪くなり、その分関節の動きも悪くなります。関節を曲げのばししにくくなったり、痛みを伴うようになります。

関節障害が進行すれば関節の動く範囲が狭くなり、最後には関節が動かなくなる場合もあります。関節内出血は繰り返せば繰り返すほどさらに出血しやすい状況になっていきます。

これを予防するためには1回1回の出血を出来るだけ早く止めて、関節滑膜の傷を最小限にする必要があります。

血友病関節症の悪循環

血友病関節症の悪循環

血友病関節症を起こさないためには、出血後の早期輸注、早期止血によりこれらの悪循環を起こさせないこと、あるいは定期投与などにより悪循環を断ち切ることが重要です。

参考:
  • 血友病基礎講座(兵庫医科大学 日笠 聡)

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