軽度の出血は、赤ちゃんや小さいお子さんが身の周りを探索し始めることにより起こる日常的な傷によって引き起こされます。この場合にはたいてい凝固因子の補充は必要となりません。
鼻出血
鼻血は非常に乾燥した空気を吸ったり、鼻をいじったり、鼻をかんだり、くしゃみをした時に起こります。凝固因子の補充は通常必要ありません。
- お子さんの上体を起こし、頭を前に傾けて、血がのどの方へ行かないようにしてください。上体を起こすことで血液の流れが少なくなり血が止まりやすくなり、また、いつ鼻血が止まったかが分かります。
- 鼻の両脇をしっかりとつまんでください。血が止まるまで5〜20分程度押さえる必要があります。
- 鼻をつまんでもダメな時は鼻の付け根に冷却剤(冷却パッド等)をおいて冷やしてください。大きいお子さんには氷を口に含ませてあげるのもよいでしょう。冷たい氷が血管を狭くしてくれます。
口腔内出血
転んだり、おもちゃをしゃぶったり、歯が生え始めた時に、口の中(口腔内)に出血が起こることがあります。口腔内出血はすぐに止まる時もありますが、にじみ続ける時もあります。唾液と混じった血は大量の出血に見えますから、シーツや衣服に血がついても、あわてないでください。口腔内出血が2時間以上続く時は、主治医か血友病治療施設に連絡してください。赤ちゃんの歯のケアについては「健やかな生活のために:歯科治療」をご覧ください
- 柔らかく、口あたりの良い物を与えてください。
- すっぱい物など、傷にしみる物は避けてください。
- ストローを使うことは避けてください(ストローで強く吸うと再び出血することがあります)。
歯ぐきから歯が生えてくると出血することがあります。生えてくる歯の上に血豆ができるかもしれません。口の中は、血を止めるために必要な「凝血塊」を溶かす働き(線溶)が強いために、凝血塊が形成されにくく、傷が治りきる前に凝血塊がはがれ落ちてしまう可能性があります。赤ちゃんの口腔内出血が止まらない場合、この凝血塊を溶かす働きを弱めることで凝血塊を保ち止血を促す薬(抗線溶剤)がありますので、主治医か血友病治療施設に連絡してください。赤ちゃんが血を飲み込んでしまうと、もどしたり吐き気を訴えます。舌に傷を見つけた時は、主治医か血友病治療施設にご連絡ください。
切り傷とすり傷
たいていの切り傷やすり傷の出血はすぐ止まるので、凝固因子の投与は必要ありません。しかし、舌、ほほの内側、額の周辺の切り傷は、血がにじみ出続ける場合があります。数日間よく観察して傷が治っているか確認してください。
- 傷口についた泥や砂などの汚れを流水できれいに洗い落としてください。
- 止血されない場合には清潔なガーゼで傷をしっかりと押さえて止血してください。
- 市販の消毒薬で消毒をして、清潔なガーゼでカバーするかばんそうこうを貼ってください。
- 傷が治るまでばんそうこうは毎日替え、消毒をしてください。ばんそうこうが湿ってきたら取り替えてください。
- 傷を縫う必要がある場合は、医師が傷を縫合する前に凝固因子を投与する必要があります。抜糸の直前にも凝固因子の投与が必要です。詳しくは主治医か血友病治療施設に連絡してください。
用語:
【凝血塊】凝固した血液のことで、ゼリーのような塊です。血小板とフィブリンが破損した血管をふさぐために網のようになった結果でき上がります。
- お子さんが血友病と診断されたご家族のために(小林正夫)