補充療法
血友病の治療は、足りない凝固因子を補充することです。これは「凝固因子補充療法※」、または凝固因子注射といい、凝固因子を血管に注射します。
このように、凝固因子が直接血液の中に入ることでフィブリン凝塊を形成するのを助け、出血が止まるようにします。この治療法ではお子さんの必要とする凝固因子を一時的に補充することになります。
凝固因子補充療法には、体育の授業や遠足、運動会などのイベントの前に凝固因子を投与して出血を未然に防ぐ「予備的補充療法」や、定期的に注射することで凝固因子レベルを自然に出血が起こらない程度に保つ「定期補充療法」があります。定期補充療法は主に重症と中等症のお子さんが対象となります。
表:定期補充療法の種類
一次定期補充療法 | 重症の患者さんを対象に2歳未満あるいは最初の関節内出血後(2回目の関節出血以前)に定期的に凝固因子製剤の注射を開始し、これを長期的に行うことにより関節症を未然に防止しようとする方法 |
二次定期補充療法 | 一次定期補充療法の定義を満たさないが、定期的に凝固因子製剤の注射を開始し、これを長期間行う方法 |
(一般社団法人日本血栓止血学会:
インヒビターのない血友病患者に対する止血治療ガイドライン 2013年改訂版より引用)
補充療法について
出血後の補充療法の原則は、出来るだけ早期に適切な量の因子補充を行うことにあります。この早期輸注を目的として1983年に家庭内治療が正式認可されました。
定期補充療法
現在、中心となりつつある治療法です。出血やイベントの有無にかかわらず、週に何回か定期的に輸注するやり方です。
定期補充療法の普及で出血の予防が可能になりました
血液中の凝固因子濃度(健常者は60%以上)
予備的補充療法
運動会や遠足といった足に負担がかかる行事予定がある場合など、出血がなくても、当日の朝などに事前に注射をするやり方です。
出血時補充療法
出血したあとに、完全に止血が確認されるまで、凝固因子製剤(以下、製剤)を注射する、最も一般的に行われてきたやり方です。
家庭療法
出血後の補充療法の原則は、出来るだけ早期に適切な量の因子補充を行うことにあります。この早期輸注を目的として1983年に家庭内治療が正式認可され、血友病の患者さんやご家族が、主治医から製剤の保管や溶解方法、注射のしかたについて指導を受けて練習することで、家庭で凝固因子の注射をすることができるようになりました。このことで、出血に対して早めに対応できるようになり、血友病の患者さんやご家族の学校生活や社会生活の質(QOL)の向上に役立っています。
整形外科的治療
関節内の出血回数増加によって関節に障害が生じることがあります。関節障害は不可逆的なので(もとに戻りませんので)他の治療法を選択する必要があります。
※用語:
【凝固因子補充療法】患者さんの、欠乏している凝固因子を体内に投与すること。
- お子さんが血友病と診断されたご家族のために(小林正夫)
- 学校の先生のための血友病ケアノート(監修 医療法人財団 荻窪病院 花房 秀次 小島 賢一)