第4回 患者会インタビュー/鹿児島血友病友の会

鹿児島血友病友の会は、まだ始まったばかり。患者さんやご家族の思いを語り合う場として、周りの方と協力しながら、長く続けていきたい。鹿児島市立病院 小児科 科長 新小田 雄一 先生、霧島市立医師会医療センター 小児科 中村 達郎 先生(※インタビュー実施時(2017年2月))

中村先生が中心となり、新たにスタートした鹿児島血友病友の会。2017年2月、患者会として初めてのイベントである講演会と患者交流会を開催しました。鹿児島血友病友の会を立ち上げた経緯や今後の活動について、友の会を立ち上げられた中村先生と、立ち上げにご協力された新小田先生にお話をうかがいました。

大学生の時  参加した患者会で、心が軽くなった。

―中村先生は、血友病患者さんとして患者会に参加されていたそうですね。

中村小学校低学年の時に、鹿児島県の患者会が開催するサマーキャンプなどに参加した記憶があります。ただ、それ以降は鹿児島県の患者会がなくなってしまったこともあり、大学生になるまで患者会には参加していませんでした。

―大学生の時には、どちらの患者会に参加されたのですか。

中村私は鹿児島県で生まれ育ち、島根大学に進学しました。その頃、結婚や将来について悩んだ時期があり、たまたま知った広島県の患者会が開催するサマーキャンプに参加してみたのです。そのサマーキャンプで同じ病気の人と色々な話をすることによって「悩んでいるのは自分だけじゃないんだ」と思えたことが良い経験になりました。また、血友病の話をきっかけに女性と親しくなったという患者さんもいて、そういう考え方もあるのかと衝撃を受けました。そのなかで、私の悩みを「時間が経てば大した問題じゃなくなるよ」と言ってくれた人がいました。その言葉で悩みが解決したわけではありませんが、心が少し軽くなったことを覚えています。今では、「あの言葉は本当だったね」と妻と笑いながら話しています。

自分が血友病であることを活かして患者さんの役に立ちたい。

―鹿児島血友病友の会を発足しようと思ったきっかけを教えてください。

中村私は血友病であることを必要以上に話していません。現在、勤務している病院でも、一部のスタッフしか知らないと思います。定期補充療法をしていると生活の上では特に支障がないため、あえて自分からみんなに話す必要はないと思っています。しかし最近は、医師であり血友病患者であることを活かして、自分から積極的に発信して血友病のことを社会に広めたい、他の患者さんの役に立ちたいと思うようになってきました。

―中村先生ご自身の中で、大きな変化があったのですね。

中村結婚して将来的に子どもを持つことを考えたときに、今の自分に何ができるかを考えたことがきっかけです。自分の子どもや孫に血友病があってもなくても、その子たちが将来血友病のことで悩んだりすることがないように、血友病患者さんやご家族が悩みを共有できるようなつながりを作り、もっと暮らしやすくなるように一般の方にも血友病を広めていきたいと考えたのです。一年前から患者会の呼びかけを始めたのですが、なかなか人が集まらないのが現状でした。そんな状況のなかで、最近友人に不幸があり、今やりたいと思っていることをやらないままにしていると後悔するかもしれない。まずは一歩踏み出してみようと思い、講演会と患者交流会を行うことにしました。そこで新小田先生にも協力を求めたところ、快くサポートしていただきました。

患者さん同士のつながりを大切にして、長く続けていくことを目標に。

―患者会として初めて開催した講演会と交流会はいかがでしたか。

新小田今回は、私が診療している患者さんやご家族にも多く参加していただきました。患者さん同士は同じ病院に通っていても普段はお互いに話す機会はなかなかありませんが、小さいお子さん達はすぐ仲良くなっていましたし、お母さん同士も色々な話ができたようで、良い交流会になりました。患者さんやご家族には、医療従事者に言いづらい悩みもあると思います。今後も患者会のイベントなどで患者さんやご家族同士で悩みを共有して、つながりを深めていければいいですね。

中村初めての試みでしたので不安でしたが、新小田先生をはじめとする諸先生方が患者さんやご家族にお声がけくださったおかげで多くの方に参加していただき、楽しい時間を過ごすことができました。そして、皆さんから「つながりができて良かった。次回もぜひ参加したい」とのご感想もいただいて、とても嬉しかったです。また、開催にあたっては私の勤務する病院のスタッフにも協力してもらい、大変ありがたく思っています。

講演会「血友病ってご存知ですか?」で語る様子

講演会「血友病ってご存知ですか?」の様子

―今後はどのような患者会にしていきたいですか。

新小田私も医師として患者会に参加したことがあり、患者さんやご家族同士のつながりは大切だと感じていたのですが、立ち上げには、マンパワー不足もあり踏み出せない部分がありました。今回、中村先生が中心となり鹿児島血友病友の会を発足したことで、今後は患者さんやご家族のつながりが広がり、大きな支えになることに期待しています。今年の4月から中村先生が私の病院に異動になるため、私もこれまで以上に協力していきたいと思っています。

中村私も子供の頃は、自分の何気ない一言で頑張って育ててくれている親を傷つけてしまったことがありました。でも大人になると「あの時は大変だったのに、愛情を持って育ててくれてありがとう」という想いが深まっていくものです。そんな自分の経験を、子育て世代のお母さんやお父さんに伝えていきたいと思っています。先輩患者さんの話は医師からの説明よりも説得力がありますし、効果的なので色々な経験を次の世代に伝えていければいいですね。これからも新小田先生や周りの方のご協力をいただきながら長く続けていける会にしたいと思います。そして、一般の方に広く血友病という病気を知ってもらうための活動もしていきたいと考えています。

同年代の患者さん同士が話し合える場を作っていきたい。

―今後の患者会の予定を教えてください。

中村今年の夏に医療従事者と患者さん向けの交流イベントを行いたいと思っています。将来的には、広島県のサマーキャンプのように親の世代と青年期、小中学生などの年代別にそれぞれで話し合えるような交流会ができたらいいですね。特に、自分で色々なことを考えるようになる思春期から青年期の患者さん達や、子育てのことで悩んでいるお母さんやお父さん達が色々な話ができる機会を作っていきたいです。

―最後に、読者の方にメッセージをお願いします。

中村鹿児島血友病友の会は始まったばかりの新しい患者会です。この会を通して、今まで自分が受けた恩をみんなに返していきたいと思っています。今後は医療従事者を含めた色々な人に患者会を知ってもらい、患者さんやご家族の思いや考えていることを語り合える場所を作っていきたいです。それによって医療従事者と患者さんがよりよい関係を築けるといいなと思っています。患者さんやご家族との交流を広げたい方、血友病について詳しく知りたい方など、どんな方でも大歓迎です。鹿児島県以外の方でも、ご興味のある方はご連絡いただければと思います。

KAGOHEMO

鹿児島血友病友の会についてのお問い合わせ

こちらからお問い合わせください。

hemokago.ped@gmail.com

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